象山・第二章
ふとした思いつきから登ることになった象山
駅を降り立つと、そこは私たちが思う「山」とは全く関係性のないような高級マンションが立ち並び
綺麗に整備された公園では
若者がストリートボールを楽しんでいた。
不思議な気持ちになりながらも歩みを進める
日没が迫り、辺りは次第に暗くなってゆく
ここか。
薄暗い階段道がどこまでも続いている
道はくねくねと曲がっており
行き先が見える状況ではない
ここからどれほど登るのか
この先に何があるのか
想像も出来ぬまま黙々と階段を登る
開始後数分で息切れが止まらない
日頃の運動不足を思い知る
雨上がりのじめじめした感覚と
南国の蒸し暑い空気とで
尋常でない汗が流れ出る
ふと気がつくと
すれ違う人々は皆、外国人ばかりである
面白いことに
誰もが黙々と階段を登り
噴き出る汗と、この先どこまで続くか分からない階段に言葉を失っている
途中、立ち止まっては皆
天を仰ぎ
ため息をつく
そんな光景を見ながら
自分もひたすら上を目指し
階段を登っていく
数十分経った頃か
行き先に数名の人だかりがあった
皆、スマートフォンで写真を撮っている
自分も
ふと視線を移動させた
これは…
台湾の夜景が始まる瞬間である
いまだかつて
ガイドブックで見る写真以上に
綺麗だと感動する光景を
見たことがあっただろうか
雨上がりの空
濡れた街中が反射している
これまでの疲労感が一瞬で消え去り
満足感と幸福感に満たされて
旅の夜が始まっていく
旅しん。